
【巨竜むさぼる 中国式「資源」獲得術】第1部 問題国家(3) (1/3ページ)2010.1.4 08:06
カブール市内の鉱山省で会見するアデル氏
■輸送路確保の長期戦略
アフガニスタン東部のアイナク銅鉱山は、世界最大の未開発銅鉱山の1つといわれている。その採掘権を落札した中国国有企業、中国冶金(やきん)科工集団(MCC、本社・北京)とはどんな企業なのか。
70を超す子会社を抱え、従業員の総数は約5万人。国有系銀行から莫大(ばくだい)な融資を受け、海外の資源獲得を積極的に進めている。昨年9月、上海証券取引所に上場した。
もともと、中国の改革・開放政策初期の1982年に、冶金工業省の海外資源開発工事を担当する会社として設立。98年に冶金工業省が撤廃されると、多くの政府機能を引き継いだ。
MCCはこのため、鉱山開発で行政機関としての側面も併せ持つ。アイナク銅鉱山の採掘権を手に入れたMCCの背後に、中国の国家意思があるとみていい。
◇
昨年11月末、カブール市内の鉱山省に赴いた。大臣室の真向かいにある待合室には、2008年北京五輪を記念したガラスのテーブル2脚が置かれていた。
大臣室で相対したムハンマド・アデル鉱山相(当時)は、2日前に彼の自宅で会ったときと感じがガラリと変わっていた。「外国人記者とは会わないことにしているのだが…」などとぶつぶつ言いながら、不機嫌そうに質問に答えた。
まず、入札は公正に行われたと主張、MCC側から約3千万ドル(約28億円)ものわいろを受け取ったとの報道は完全に否定した。
カブール市内の鉱山省で会見するアデル氏
■輸送路確保の長期戦略
アフガニスタン東部のアイナク銅鉱山は、世界最大の未開発銅鉱山の1つといわれている。その採掘権を落札した中国国有企業、中国冶金(やきん)科工集団(MCC、本社・北京)とはどんな企業なのか。
70を超す子会社を抱え、従業員の総数は約5万人。国有系銀行から莫大(ばくだい)な融資を受け、海外の資源獲得を積極的に進めている。昨年9月、上海証券取引所に上場した。
もともと、中国の改革・開放政策初期の1982年に、冶金工業省の海外資源開発工事を担当する会社として設立。98年に冶金工業省が撤廃されると、多くの政府機能を引き継いだ。
MCCはこのため、鉱山開発で行政機関としての側面も併せ持つ。アイナク銅鉱山の採掘権を手に入れたMCCの背後に、中国の国家意思があるとみていい。
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昨年11月末、カブール市内の鉱山省に赴いた。大臣室の真向かいにある待合室には、2008年北京五輪を記念したガラスのテーブル2脚が置かれていた。
大臣室で相対したムハンマド・アデル鉱山相(当時)は、2日前に彼の自宅で会ったときと感じがガラリと変わっていた。「外国人記者とは会わないことにしているのだが…」などとぶつぶつ言いながら、不機嫌そうに質問に答えた。
まず、入札は公正に行われたと主張、MCC側から約3千万ドル(約28億円)ものわいろを受け取ったとの報道は完全に否定した。
入札にはMCCや米国、カナダの企業など計5社が参加。アデル氏によると、投資額は29億ドル(約2700億円)を提示したMCCが最高で、米企業は9億ドル(約840億円)にすぎなかった。アフガン政府へのロイヤルティーやボーナスでもMCCが圧倒した。
アデル氏は中国国有企業の優位性をこう指摘する。
「入札の際に欧米企業が資金面で(MCCより)困難を抱えているのは分かる。でも、どれだけのマネーをかき集められるかは、私たち側の問題ではない。入札がすべてなのだ」
ただし、MCCが落札した理由は「マネー」だけではなかったという。「輸送網が整備されていないアフガンにおいて最も必要なものが、MCCの提案には含まれていた」(アデル氏)
鉄道の敷設である。
ここに、中国の深謀遠慮が凝縮されていた。
◇
現在、アフガン国内に機能している鉄道網はなく、アジア開発銀行(ADB)が整備計画を進めている。
MCCの鉄道敷設案の詳細は不明だが、ADBカブール事務所のクレイグ・ステファンセン所長(米)によると、(1)アイナクから、バーミヤンを通りマザリシャリフまで(2)アイナクから、パキスタン国境に近いジャララバードまで-の2路線とみられるという。
マザリシャリフからさらに北方のウズベキスタン国境までは、ADBが鉄道整備を計画している。実現すると、その先の中国・新疆ウイグル自治区のウルムチまで鉄道でつながる可能性も出てくる。
アデル氏は中国国有企業の優位性をこう指摘する。
「入札の際に欧米企業が資金面で(MCCより)困難を抱えているのは分かる。でも、どれだけのマネーをかき集められるかは、私たち側の問題ではない。入札がすべてなのだ」
ただし、MCCが落札した理由は「マネー」だけではなかったという。「輸送網が整備されていないアフガンにおいて最も必要なものが、MCCの提案には含まれていた」(アデル氏)
鉄道の敷設である。
ここに、中国の深謀遠慮が凝縮されていた。
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現在、アフガン国内に機能している鉄道網はなく、アジア開発銀行(ADB)が整備計画を進めている。
MCCの鉄道敷設案の詳細は不明だが、ADBカブール事務所のクレイグ・ステファンセン所長(米)によると、(1)アイナクから、バーミヤンを通りマザリシャリフまで(2)アイナクから、パキスタン国境に近いジャララバードまで-の2路線とみられるという。
マザリシャリフからさらに北方のウズベキスタン国境までは、ADBが鉄道整備を計画している。実現すると、その先の中国・新疆ウイグル自治区のウルムチまで鉄道でつながる可能性も出てくる。
中国が鉄道を敷設するとみられるバーミヤン付近には、ハジガク鉱山がある。純度の高い鉄鉱石を産出し、「年20億ドル(約1860億円)の富をもたらし続ける可能性がある」(同所長)という。そして入札でインド企業との争いになるとみられているのが、ほかでもないMCCなのだ。
◇
中国は経済成長を支えるため、中東、アフリカなどで資源エネルギーの囲い込みに躍起になっており、アフガンのように、点と点を結ぶ線、つまり輸送路の確保も同時に進めている。
パキスタン南西部のグワダルやスリランカ南岸のハンバントタなどの港湾整備を積極支援して、“真珠の首飾り”のようにインド洋上に拠点を構築しようとしているのも、その一環だ。
将来、アフガン東部ジャララバードとパキスタンの鉄道網が連結されると、中国、アフガン、インド洋という、米国の影響力が強いマラッカ海峡を通らなくてすむ新たなルート建設も現実味を帯びてくる。
昨年7月、アイナク銅鉱山ではアデル氏やMCCの沈鶴庭社長も出席し開所式が行われた。しかし当日、付近の道路で爆弾テロが起き、住民ら27人が死亡するなど治安が悪化、開発は遅れ気味といわれている。
すでに現地入りしている百人を超す中国人労働者が何をしているのか、情報は全く漏れてこない。
カブールの南方約40キロ、かつて国際テロ組織、アルカーイダの軍事拠点があったことでも知られるアイナクを目指すことにした。(カブール 藤本欣也、北京 矢板明夫)
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中国は経済成長を支えるため、中東、アフリカなどで資源エネルギーの囲い込みに躍起になっており、アフガンのように、点と点を結ぶ線、つまり輸送路の確保も同時に進めている。
パキスタン南西部のグワダルやスリランカ南岸のハンバントタなどの港湾整備を積極支援して、“真珠の首飾り”のようにインド洋上に拠点を構築しようとしているのも、その一環だ。
将来、アフガン東部ジャララバードとパキスタンの鉄道網が連結されると、中国、アフガン、インド洋という、米国の影響力が強いマラッカ海峡を通らなくてすむ新たなルート建設も現実味を帯びてくる。
昨年7月、アイナク銅鉱山ではアデル氏やMCCの沈鶴庭社長も出席し開所式が行われた。しかし当日、付近の道路で爆弾テロが起き、住民ら27人が死亡するなど治安が悪化、開発は遅れ気味といわれている。
すでに現地入りしている百人を超す中国人労働者が何をしているのか、情報は全く漏れてこない。
カブールの南方約40キロ、かつて国際テロ組織、アルカーイダの軍事拠点があったことでも知られるアイナクを目指すことにした。(カブール 藤本欣也、北京 矢板明夫)
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